36.朴槿恵大統領就任を祝す

2013年3月1日

 韓国に第18代朴槿恵大統領が誕生した。しかも、女性大統領という男性社会の韓国では考えられない「奇跡」の出現によってである。

 世界では、現職と元を含めた女性のリーダーというのは、イギリスのサッチャー、ドイツのメルケル、タイのインラック、インドのインディラ・ガンジー首相などをはじめ、フィリピンのアキノ、アロヨ、アルゼンチンのイサベラ・ベロン、インドネシアのメガワティ、ブラジルのルセフ大統領など数多く存在している。

 その上、おそらく小国を含めた歴史上の女性リーダーを挙げればきりがないほど、その存在が列挙されるだろう。その意味では、朴槿恵大統領の誕生は、女性リーダーという点からのみ考えれば、特異な現象というわけではない。また、世界的には男女を問わず有能な女性リーダーが輩出する傾向があり、「女性の時代」という潮流からしても突出した出来事というわけにはいかないだろう。

 日本も、安倍内閣には次かその次に首相になるかもしれない女性リーダーが大臣や党幹部を務めているという現実がある。有能な女性が男性に代わって政治を動かし、社会をリードする時代は今や常識になりつつあるとさえ言えよう。その点で、これらの女性大統領、首相に比べて、今回の韓国の女性大統領の違いは何かあるのか。

 彼女の場合、両親の大統領とファーストレディーが凶弾に倒れたという辛苦をなめていることがある。といえば、先進国の中でも急激に大国化してきた韓国の政治情勢、今後の東アジア情勢のカギを握っているということかもしれない。

 北朝鮮の核問題、政治経済大国・中国の軍事や政治問題で示される中華主義、そして、隣国・日本との領土問題や歴史問題での軋轢などを抱え、その政治的リーダーシップは、どの国の元首よりも強く問われるといっていい。しかも、歴史的に李氏王朝時代からの政治的紛争「党争」の激しい国柄であり、さまざまな勢力といかに闘い、妥協し、調停して主導権を握っていくかは男性のリーダーでも困難な課題である。その意味で、特に現在の韓国の舵取りは難しいものがある。

 これまでの男性の大統領も、政権を去ってから身内の汚職で逮捕・起訴されるなど、政治的な毀誉褒貶(きよほうへん)、功罪は激しいものがある。また、現時点でも、朴槿恵政権では閣僚の任命ができずに政治的空白を生み、その指導力が問われる事態になっている。そのことからも、朴槿恵新大統領の船出は前途多難であることは言うまでもない。

 しかし、マスコミなどがその時点での問題に焦点を当てて批判をするのは常套手段であって、それによって朴槿恵新大統領の評価がすぐに定まるわけではない。

 歴代の有能で歴史に名を残すリーダーであっても、最初は悪評や批判にさらされていることは、イギリスのチャーチル首相や俳優上がりと揶揄(やゆ)されたレーガン米国大統領の例もある。今ではチャーチルも、レーガンも歴史に名を残した傑出したリーダーとして評価が定まっていることからも、マスコミの評価がかなり恣意的であることがわかるだろう。

 韓国で誕生した新しい女性リーダーだが、歴史的にみるならば、これが歴史上初というわけではない。古代の三国時代、新羅には善徳女王という優れた指導者が誕生している。善徳女王は弱小国家だった新羅の舵取りをし、三国統一のいしずえを築いた偉大な女王であった。仏教を保護し皇龍寺などを建て人心をひとつにし、文化政策でも瞻星台(天文台)などを築いたとも言われている。また、有為な人材を先進国・中国の唐に派遣し、国力の発展に寄与している。

 この善徳女王のように、朴槿恵新大統領は、これからその指導力を発揮して、南北平和統一とこの混沌とした東アジアに平和を実現し、さらに世界平和への大きな前進を遂げる偉大な大統領になることを期待したい。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 大統領(大韓民国)(Wikipedia)

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