61.自然災害問題と平和

2015年4月1日

 西洋文明が導いてきた近代化は、人間中心主義の思想が軸となって、山や河の自然を開発し、その資源を利用し、物流が発展し電化生活によって都市の快適さが追求され、かつてあった単純労働のわずらわしさからなどから解放されることとなった。科学によって発達した文化文明の恵沢をわれわれは享受している。そのエネルギーとなる電気やガス、石油、原子力なども、自然開発によって生まれたものである。

 しかし、それは基本的に先進諸国のみが享受している面があり、世界には貧しい国や飢餓や病気によって生命が脅かされている国々は少なくない。そこでは、自然の資源をみずからの国で利用するだけの技術がないめに、先進諸国の生活を維持するための資源の草刈り場的な状況に陥っている。

 その意味では、世界における紛争や戦争など様々な問題の一原因には、国土や資源を軸とした自然環境をめぐる乱開発の問題もあるといえるだろう。そして、この自然開発問題は、環境の激変、破壊を生み、その自然の調和が失われることによって、天変地異とも言うべき自然災害をもたらすことにもなっているのである。

 このほど日本の宮城県仙台市で行われた「第三回国連世界防災会議」は、このような地球規模に起こる昨今の自然災害・異常気象などの問題をどのよ うに解決し、対処していくか、災害による人命、生計、及び重要なインフラの損失を軽減することをテーマとして話し合われた会議である。それだけ地球に起こる自然災害・異常気象などが、一国や地域だけの問題ではなく、すべての国にとって、今や生存を脅かすものとなっているという ことだろう。

 この問題の背景には、自然の異常という現象の原因として人間による環境破壊、すなわち文明病とも言うべきものがあることを知らなければならない。自然の異変が自然破壊によって起こされた面が多大にあるからである。

 この会議が重要なのは、単に一部の自然環境を災害から守るということだけではなく、もはや石油エネルギーにしても、海洋資源にしても、その再利用は、一国だけではなく、すべての国々がその影響を受けてしまうということである。自然の資源は無限にあるのではなく、有限であり、いつか尽きて無くなってしまう。

 自然災害を考えることは、まさに自然保護に直接結びつくとともに、それはまた、平等な利用開発を考える平和問題にも繋がるのである。平和を武器の削減から考える政治的な会議も重要であるが、こうした自然の平和な利用・保護問題は、世界平和のためにも重要な会議であるのだ。

 そのためには、まず隣国同士で実質的な解決を図らなければならない。国益にも関わるので、取り組みは近隣の国、日本であれば韓国、北朝鮮、中国、台湾、ロシアなどとも協議する必要がある。共栄共生のために資源の有効活用・資源保護・環境改善を働きかけなければならない。

 また、それは国内でも、このような共栄共生の精神文化を育てることから着手しなければならないのである。環境保護は、本質的には人権問題や人間の共生問題とも関わり、日本であれば、マイノリティーとマジョリティーの共生、すなわち在日同胞との共生共栄の文化を育むことに繋がるからである。

 その意味では、環境問題をわれわれは自然災害・異常気象という災害を防ぐための問題だけではなく、人類の共生共栄の平和を考える積極的な問題解 決の道として、72億人を超える人口と食料、エネルギー、環境問題も真剣に取り組み、考えなければならないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 国連防災世界会議 (Wikipedia)

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