49.平和を生む共生思想

2014年4月1日

 冷戦構造から抜け出し、世界平和への道を共にたどりつつあったアメリカとロシアがクリミア問題を中心として、極度の緊張状態に陥った。

 アメリカやヨーロッパは、一方的なウクライナの内政干渉だとして非難の声を上げてきた。ソ連崩壊以後、その連邦体制が崩れ、各独立国家として新しい新秩序が形成されてきた現状のパラダイムが崩壊の危機を迎えている。対処の仕方が誤れば、極端にいえば、第三次世界大戦へと発展しかねない問題を含んでいる。

 第一次も第二次世界大戦も、地域紛争や民族問題から勃発し、イデオロギーや利害関係や国益を軸として多くの国家が参戦した。このクリミア問題をそのような観点から見直し、ただ一方的にアメリカやヨーロッパ側を正義としロシアを悪という単純な二元論で捉えることはできないことを知らなければならない。両者の背景にある歴史問題やクリミア国民がロシア人とウクライナ人で構成され、ロシア人が優位なのはなぜなのか、という問題も視野に入れる必要がある。

 一方、これまで最悪とも言える状況だった日韓・韓日関係で、新しい展開が生まれた。欧州オランダのハーグで、オバマ大統領の仲介で、これまで延期されて開催できなかった日韓首脳会談が実現したことである。物事のスタートはまず会うことであり、それが政治的なショーであったとしても、日韓の首脳会談が実現したことは一歩前進したと評価できる。

 もちろん、その実質的な会談の実があったかどうかという政治的成果では、それほど目に見える成果があったとはいえない。背景には、中国の軍事的脅威、北朝鮮の核開発などの問題があったとしても、実質的な関係の再構築のための端緒に就いたことは間違いない。

 後は、実務者による水面下の交渉、そして、険悪になった日韓・韓日関係の修復をしていくプロセスが残されている。今後、そのプロセスがどのようになっていくはわからないが、いずれにしても、北東アジアと世界平和への両国の協調、そしてアメリカの関与が重要な要素であることだけは間違いのない事実である。

 そのような高い段階での協調共生の会談が実現することを望みたい。スタートラインに立った両国が、どのような関係を今後構築していくかは未知数だ。だが、ただこれまで近年になく余りにも最悪の状態であったために、かえって真の意味での友好関係への希望があることを指摘したい。

 これまでの日韓・韓日関係は、政治的妥協からあまり互いの歴史的課題や領土問題を棚上げしてきた面がある。そうしなければならなかった時代状況が要請した面もあるが、それで、すべての問題が解決したわけではない。

 政治的損失は政治的解決ができるが、人間の心の問題は政治的解決では限界があり、それは共生協調による草の根の交流が求められるのである。物質的な援助は、インフラ整備には大きな成果を上げたが、心的な補償までは充填(じゅうてん)することはできない。政治的に解決した部分と根源的には解決できない問題が、韓日・日韓関係の中では、今回の最悪な関係になった両国の中で横たわっているのである。

 それが今回噴き出したということは、体内に眠っていた病気の菌が膿(うみ)となって表面に出てきたという面がある。傷や病気の回復には、膿を出さなければ治癒できない。 それと同じように、現在、過去においては友好的な関係であった日韓関係が回復不可能にみえるまで悪化していることは、その膿を出す段階にまで、 両国が成熟してきた関係へ向かっているとみることができるのである。

 そのような観点からもう一度、在日同胞の問題を軸として、日韓・韓日関係を高い次元で再構築すべき時代を迎えているということを知るべきである。日韓・韓日の狭間にいる在日同胞の使命、責任が大きいのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】(年齢順) 朴槿恵(Wikipedia)
安倍晋三(Wikipedia)
  バラク・オバマ(Wikipedia)

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