84.平和への祈りと希望

2017年3月1日

 世界各地で、紛争や戦争の声が絶えない。どこにも、未来世界の平和を生み出すような兆しが見えないと思うこともある。もちろん、それは事実ではない。実際は、平和のための努力がなされ、会議や政治交渉が行われている。

 第二次世界大戦以降、世界的な災害となり犠牲者を生み出した世界的な戦争を起こさないための努力や様々な提案、交渉がこれまで続けられてきた。だが、小さな紛争から民族国家的争いに進展し、それがやがては多くの国々を巻き込む戦争で発展することは、第一次、第二次の世界大戦の事例からも明らかである。

 小さな紛争だからといって、それを放置することはできない。まして、核兵器という最終的な武器、ICBMや移動式核ミサイル、また細菌や科学兵器など、地球規模の被害を及ぼす武器が、世界各国で開発されているような状況では、民族紛争やテロだとて、いつそれが大規模な戦争の発端となるかもしれない。それほど現在の世界情勢は危機的な状況にある。

 核兵器がいつ使われるか、それがテロなのか、益々緊張度を高めている現在の世界である。北朝鮮を中心とした北東アジア、数千年の歴史が背景にあるイスラエルとパレスチナの紛争、そして、そこに絡む宗教対立、そして、イスラム教の過激派によるテロの脅威、これがいつ発火点となって核兵器が使用されるか誰も予想できない。だからこそ、われわれはそのような小さな危機にも、油断せず、そして、平和増進のための努力を怠らないようにする必要がある。

 そういうと、世界的な規模の戦争を食い止めることが、一個人、あるいは集団、ある国家などの規模で出来るのか、という疑問をもつ人もいるだろう。確かに、一個人や小さなグループで、すべての紛争や戦争の危機を食い止めることは、現実的には不可能だろう。だが、過去の歴史を振り返り、そこに起こった様々な事件や事象を顧みれば、何事も最初は小さな運動から、一個人から始まっている。

 世界的な宗教、キリスト教、イスラム教、仏教にしても、最初は一個人から出発したのである。宗教ではなくても、国家の成立や改革にしても、最初から形が整っていたわけではない。そのような小さな出発が大きな世界平和運動につながった例も、ガンジーの無抵抗主義もあるし、また、国家が互いにその立場を尊重し、民族自決の流れも、また小さな運動から始まっている。

 たとえば、アジアに大きな潮流をもたらした各国の独立運動も、国際連盟や国際連合などが、その精神の源流となっている。特に、ソ連のレーニンやアメリカのウィルソン大統領が提案した民族自決の精神は、アジアの植民地国家であった韓国を動かし、その独立運動の推進力となっていることは間違いない。

 そして、その先頭を切った韓国3・1独立運動の動機ときっかけとなったのが、日本に留学していた韓国の留学生を中心とした2・8独立宣言であった。しかも、その韓国独立運動も、一国にとどまらずに、中国の5・4運動に波及し、世界各地に諸国家が誕生する契機となったのである。

 この小さな出発が世界を動かすことになったことを改めてわれわれは思い浮かべ、平和を生み出す最初の一歩を踏み出す勇気を持たなければならない。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)


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