80.世界人権宣言に平和精神を学ぶ

2016年11月1日

 現在、世界情勢をみると、第一次や第二次の世界大戦の前夜のような緊張状態と混乱に満ちているように見える。アメリカや中国、ロシア、そして、イギリス、EU、日本、韓国などの世界情勢に大きな影響を与えている国々の動向がかなり流動的になっているからである。

 アメリカは、オバマ以後の大統領選挙で次世代のリーダーが選ばれるが、クリントン氏、トランプ氏のいずれが大統領になっても、かつての世界の警察と呼ばれたようなプレゼンスはなくなっていくだろう。また、アメリカとともに民主主義陣営の柱であったEUがイギリスの脱退という崩壊や分裂が予想され、ロシアもソ連崩壊以後の政治的軍事的なパワーを取り戻そうとし、中国も大国として南シナ海の領海問題などで勢力を伸ばそうとしている。

 アメリカ米大統領選挙の結果は、この時点では明らかではないが、いま現在の世界のリーダーを見ると、中国の習近平主席にしても、ロシアのプーチン大統領にしても、強権政治であり、国の威信を取り戻すためにかなり強引な政策を推し進めている面がある。

 このような状況の中で、もし、仮に世界的な戦争が勃発すれば、それは第一次、第二次大戦のような程度の被害では収まらず、全世界的な破壊と悲劇的な事態を迎えることは間違いない。われわれは、このような危機的状況の中で、いかに世界平和を実現していくか、いかに未来の指針を求めていくか、改めて根底から考えなければならない。

 しかし、希望がないではない。人類は悲劇的な戦争を繰り返してきたが、終戦とともに、二度と戦争をせずに何とか平和な世界をつくるために努力してきた。それが国際連盟と国際連合の創設である。そして、国際連合はさまざまな活動を通じ、戦争防止と平和実現のための活動を展開している。

 その基本にあるのが、「世界人権宣言」である。世界人権宣言は1948年12月10日の第3回国連総会で採択され、すべての人民とすべての国が 達成すべき人権の共通基準として宣言された。「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」とその前文で謳われたように、人権を守ることがすなわち平和世界を生み出す基礎であると述べている。

 その人権尊重の内容は、「自由権的諸権利」(第1~20条)、「参政権」(第21条)、「社会権的諸権利」(第22~27条)などに集約されるものである。要するに、人類が分け隔てなく、さまざまな文化、思想、宗教、人種などの差異を超えて、互いに尊重し、互いに愛し合うことのできる平和な世界、 それが国連が目指す世界平和の基本思想なのである。

 これは別な言い方をすれば、マジョリティーとマイノリティーがともに平和に暮らすことのできる世界を創造するということでもある。現在の世界の国々を見ても、単一民族が国家を形成しているところはほとんどない。マジョリティーの民族とマイノリティーの民族が共存しているのが現状であり、この角逐によって、紛争や戦争の原因になっている場合が少なくない。アフリカの部族戦争や宗教戦争などは、この代表的な例といっていい。

 日本であれば、日本人と在日外国人の共生共栄共存問題であるが、特に、その中でも在日同胞との問題は、歴史的な問題を含み、いまなお、根本的な解決を見ていない。その意味で、改めて国連の宣言した「世界人権宣言」の精神を学ぶことは世界平和にも通じる道であることは言うまでもないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 世界人権宣言
国際人権規約

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