10.世界平和を築く新時代へ

2011年1月3日

 2011年の年頭にあたり、今年がどんな年になるか概観し、われわれがどのように希望ある未来、世界人類の平和と繁栄に貢献できるかを考えてみたい。

 その材料となるのは、昨年の政治・経済・社会に起こったことであるが、世界的な不況や南北問題、先進諸国の貧富の差にみられる矛盾が露呈した内外ともに厳しい状況にある。戦争や紛争は、世界的な次元では起きてはいないが、アフリカの民族紛争、中東におけるパレスチナ問題、イラクにおける治安悪化、アフガニスタンの情勢悪化などのほか、東アジアでは北朝鮮の核開発、天安艦攻撃による沈没事件、延坪島砲撃など挑発的な行為を続け、韓半島がかつてない緊張状態に見舞われている。

 過激なテロ事件も後を絶たない。自爆テロによる被害は、止まないどころか増えており、未だ減少していない。その背景には、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教など宗教対立が横たわっている。

 一方、まだ共産主義のイデオロギーを堅持している経済・軍事大国となった中国の覇権主義的な姿勢は、米ソの冷戦構造、その後のアメリカを中心とした世界秩序の改変を生みつつある。その姿勢は、世界情勢の調和を破壊し、新たな戦争への引き金となりかねない危険な要素がある。

 軍事的パワーと経済的パワーによる世界制覇は、力による支配であり、その中華思想を中心とした思想が世界平和と人類の共生共栄社会を生み出すとは考えられない。過去の歴史を振り返ってみても、軍事的支配のみで平和を維持した国はほとんど存在しない。それは人間本来の性質に、「自由」と「幸福」を求める欲求があるからである。

 自由を守るために、人は命さえ差し出すことをわれわれは、歴史の中でいくらでもその例を見つけることができる。その意味で、現在のままの姿であれば、中国の覇権主義はやがて終焉を迎えることは火を見るよりも明らかである。

 日本においても、混迷した状況は変わらない。経済の長期低迷と不況によるリストラで中高年の自殺が増加し、また、派遣切りなどに象徴されるように職を失ってホームレスなった若者や中高年・老人も少なくない。問題は、社会の救済と保障制度の整備だけで解決できないことが含まれていることである。家族や社会との関係の希薄さが、それを増長していることである。若者の無軌道な犯罪への傾斜や都会の独居老人の孤独死というのも、家族の絆が切れた現代社会を象徴する出来事だ。それが社会の流動的な不安要因となり、その不満が爆発し、暴動やテロへと発展しないとは言えないだろう。

 マイノリティーに代表される社会的な弱者の救済と自立支援、そして、在日などの少数民族との和合と協調が求められるのである。また、凶悪犯罪の増加などの社会問題や政治の混迷、尖閣諸島や米軍基地の沖縄移転問題など、内外共に問題を抱え、今年もその問題で政治の混迷は続いている。

 こうして課題や懸念材料を挙げていけば、今年をはじめとした未来は希望を見いだすことができない。だが、こうした状況は、逆に言えば、課題を前向きに消化し、解決に向かって各民族や国家が共同して邁進していくことによって必ず解決することが可能であるということである。

 世界的な、これらの問題の根底にあるものを見据えて、それを解決していく勇気と希望をわれわれは持たなければならない。その解決策に必要な要因のうち、強いて一つ挙げれば食糧問題であり、エネルギー枯渇の危機、水などのライフラインの危機である。特に、食糧問題はアフリカの民族紛争や砂漠的な気候による作物の安定的な供給ができず、餓死者が後を絶たないことをみればいい。もはや人類が家族であるとするならば、われわれは自分のこととして胸を痛め、解決に奔走すべきである。

 そして、それはアフリカだけの問題ではなく、やがて世界人口の増加によって、間違いなく食糧問題が全人類を襲うであろうことを考えれば、われわれ自身の問題でもあるのだ。こうしたことを考えれば、今年2011年は、世界平和を願うだけではなく、具体的に解決するために行動を起こさなければならない。在日同胞の和合と南北平和統一と世界平和、共生共栄共義社会出現のためにその理想と方策を提示し続けることを誓う次第である。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 飢餓(Wikipediaより)    
【参考リンク】 WFP 国連世界食糧計画    
【参考リンク】 平和(Wikipediaより)    

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