8.世界平和に向けた国連改革を

2010年11月2日
The_United_Nations_Building国際連合本部ビル

 2010年10月24日、国際連合は創立65周年を迎えた。その意味で、創設以来の世界平和にどのように貢献してきたか、という評価をしなければならない時期であると言えよう。

 創立以来、振り返ってみれば、その目標である戦争や紛争を完全に根絶できたとはいえないが、多くの分野に貢献してきたことは間違いない。

 飢餓問題、紛争の調停、病気や災害の救援活動、平和維持活動、児童の病気や犯罪から守るための活動など、世界の諸問題に関わり、国連が指導力を発揮してきた面は認めなければならない。

 国際連合がなかったなら、どれほど多くの問題と障害に世界各国、特に開発途上国が直面し、混乱と絶望が襲ったか計り知れない面がある。また、紛争や戦争を全面的に調停し、食い止めるというイニシアチブを執るということではやや初動活動が常任理事国など各国の思惑に左右されて遅れてしまう点もあるが、紛争地の再暴発を防ぐ平和維持活動では一定の成果を上げているのは確かである。

 実際、イラクやアフガニスタンなど平和維持のための活動は、現在、多くの犠牲を払いながらも、平和維持・秩序に貢献している。

 国連の戦争介入で近現代で見逃せないのは、1950年6月25日に勃発した韓国動乱(朝鮮戦争)である。この戦争によって、瞬く間に韓国は北朝鮮軍に制圧され、あとわずかの所まで追い詰められた。このとき、国際連合は6月27日に安保理を開催し、北朝鮮を侵略者と認定、その後、北朝鮮弾劾・武力制裁決議に基づき韓国を防衛するため、アメリカ軍を中心としてイギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどのイギリス連邦占領軍を含むイギリス連邦諸国、さらにタイやコロンビア、ベルギーなども加わった国連軍(厳密には多国籍軍)を結成した。在日学徒義勇軍も参戦している。

 この国連軍の介入によって、韓国が共産化されずに戦後、奇跡的な復興を遂げ、現在、世界の経済大国と肩を並べるほどの国力を持つに至った。

 冷戦終結後の1991年9月17日には、その韓国動乱で戦った両国、停戦中の韓国と北朝鮮が同時に国連に加盟している。これは国連が当時の国際政治状況を反映し、矛盾した機関でもあることを示す象徴的な出来事と言えよう。

 国際連合は第二次世界大戦以降、先進諸国が開発途上国などを植民地化するという蛮行を止め、どんなに小さな国であってもその独立を手助けし、開発と発展に援助を惜しまないという体制づくりをしてきた。その点では、国際連合が果たした功績は忘れることができないだろう。

 しかし、そのような過去の大きな成果や功績を認めた上でも、今の世界の状況を顧みたときに、国際連合の役割がもっと新しい次元へ飛躍しなければならないという実感も否定できないのである。

 特に、世界的な大戦というものは今のところ無くなったものの、国家や民族、種族、宗教などの違いによって、局地的な紛争や衝突、テロなどが横行し、その悲劇的な状況は益々増大している。

 また、有限な資源、エネルギーなどを確保するために、国境紛争や領海紛争などの資源争奪戦とも言えるような状況が生まれつつあり、近未来はそのために新たな秩序とパラダイムが求められつつある。

 人口増加による地球規模の食糧問題も見逃せない。韓国動乱の1950年代には25億人だった人口も、現在、約69億人となり、2050年には89億人になると予測されている。今や自然破壊・資源の消滅・食糧不足に全世界が陥ってしまうのは目に見えている。そのためにも、資源保護・共同開発・海洋開発による漁業資源の養殖・開発など、国際連合が取り組まれなければならない課題は数多い。
 


全加盟国が集まる国連総会場

 にもかかわらず、国際連合の活動は、組織の動脈硬化状態、麻痺状態をしばしば呈してしまう。これは国連加盟国がそれぞれの立場、国益を無視できず、各国の思惑が一致しないからだろう。そうした状況を考えれば、国際連合の機能的かつ思想・政治的な改革は必至の課題である。

 1945年の創立時には加盟国が51ヵ国だった国連も現在192ヵ国にも拡大していることも国連が合意しにくい理由かもしれない。その意味では、政治的な国益の角逐する争いの場と化した国連の議会を改革し、国益ではなく国境を超えて地球規模の世界の共生と共栄のために働く、より上位機能を持ったグローバルな組織、それこそ世界平和と幸福のために活動する超国家、超宗教的な機構が求められていると言えないだろうか。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】国際連合憲章  →右のボタンをクリックすると前文のみ拡大します  
 


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