58.真の世界平和を目指す年に

2015年1月1日

 俳人の高浜虚子に有名な「去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの」という新年の句がある。解釈はいろいろとされているが、基本的に新年を迎えたけれども、実際は時間は連なり、変わらないものが流れているという意味と受け止めていいだ ろう。

 年が改まっても、去年と同じように変わらないものを見据えて、生きていくこ とが必要ということでもある。新年の2015年を迎えたが、今年はどのような年になるのだろうか。

 年始には、去年とは違って希望的な感慨を抱きがちであるが、それは日本人の自然観や時間観が、春夏秋冬のサイクルの中で、春に種蒔いたものが夏に成長し、秋に実り、そして、冬にまた再び種となって春を待つ、という自然の輪廻に根ざした人生観から来ているからだろう。

 去年は過去として流れ去り、新しい未来がやってくるという考え方をしがちな歴史感覚だが、それは日本だけの見方であることは言うまでもない。実際には、新年を迎えても、それは過去への決別ではなく、単なる通過点であり、メモリアルの節目に過ぎないという考え方が世界には多い。その意味で、世界各地で勃発したイスラム教過激派のテロ活動が示すように、今年もまた、昨年に積み残した数多くの問題を直視しなければならないことを 教えてくれるといっていいだろう。

 世界情勢も混沌とし、今年が波乱の多い年であり、平和を作り出すには、まだ 多くの努力と時間が必要だということである。しかし、今年は、多くの面で節目となる年であることに注目すれば、それを起点として、新たな平和や友好への実践を試みることができることも確かである。

 たとえば、今年は戦後の歴史を刻む出来事である「日韓・韓日国交正常化50周年」という節目の年になるし、また世界的な規模で膨大な戦争犠牲者を生んだ第二次世界大戦終結から70周年を迎える。特に、ここ近年、最悪の状態になった日韓関係においては、この正常化50周年というのは、新たな日韓・韓日関係を築く上で、大いなるチャンスといえるだろう。

 まず、両国の首脳、安倍晋三首相と朴槿惠大統領の首脳会談の早期の実現は何よりも願われる課題である。そうでなければ、このチャンスを逃せば、今後、両国関係は益々こじれてしま う可能性がある。そのことにより日韓米を軸とした民主主義的な陣営の構築関係が壊れてしまうことがあり得るし、東アジア情勢の平和が不安定になることが予測される。

 東アジアは、中国、北朝鮮、ロシアという、軍事的にも日韓関係に脅威になる恐れがある緊張関係が横たわっている。その意味では、東アジアの平和、ひいては世界平和を占う上でも、この日韓・ 韓日首脳会談を早期に実現しなければならない。

 また、第二次世界大戦終結から70周年というのは、第一次、第二次と続いた世界を巻き込んだ戦争を再び起こさないように考えるべき時であることを改めて自覚する必要があるだろう。その軸になるべきなのが、日韓米の関係であることは間違いなく、そして、過去の問題を超えて未来の平和友好を目指すべき年とすべきなのである。

 新約聖書に「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ」(マタイ福音書9:17)とあるように、新しい年を迎え、新しい気持ちをもって出発したいものである。

 皆様の家庭と民族と国家と世界が平和で幸福でありますように祈願致します。
 

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約 (Wikipedia)

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