66.友好の絆を結ぶもの

2015年9月1日

 今年は、戦後七十年目を迎えるが、歴史問題の解決は日韓・韓日関係をみればわかるように、完全な解決の糸口を計ることはなかなか難しい。そこには、民族感情や国益、世界情勢など、周囲を取り巻く環境など、さまざまな要因があって複雑に絡み合うからである。それを解決するためには、70年という期間は短いといえるし、結果的に解決を先延ばしするようなことになれば、当事者が亡くなることを考えれば あまりにも長いとも言えるだろう。

 この問題に関しては、数学の数式のように絶対的な答えは得られないというのが本当のところである。果たして根本的な解決はできるのか。基本的に考えれば、この問題を解決するのは、政治的な戦後処理の問題としてある程度の妥協と一致点を見いだすことと、もうひとつは人道的な民間レベルにおける補償や交流など、人間同士の関係改善という側面の両面からやらなければならない。

 そして、これを行うには、両国の間に政治的な交流(首脳会談など)のほかに、国民同士の草の根交流による相互理解を深めていくということにも繋がる。当たり前のことだが、その当たり前のことがなかなか通じないのが、現在の陥っている日韓・韓日関係である。

 政治的にある程度の協定が結ばれても、それは国家間の妥協点を見いだしたことに過ぎず、その国内感情まではなかなか納得していないという面が残るのである。いつまでも、国家同士が対立していては、平和な復興はできないから、まずは政治的に調停を結ぶというのは、その是非や善悪を別にすれば、自然な プロセスである。

 日韓・韓日関係も、そのような過程を経て、戦後処理をし、日韓・韓日国交正常化の道を歩み、それから50年という節目を迎えている。それから関係を成熟させていくというのが、次の段階へのプロセスだが、それがここに来て大きな危機を迎えている。かつてなかったほど冷え切った日韓・韓日関係は、反日・嫌韓という両国の国民感情をともなって、妥協点さえ見えにくくなっているとさえ言えよ う。

 ヘイトスピーチなどは、その一例と言えるが、ただ互いにののしりあっても、根本的に解決にはならない。むき出しの感情的な行動は、両国の関係を良い方向へ結ぶことは絶対にあり得ず、むしろ取り返しのきかない事態や国交断絶など、修復不可能な関係に陥らせる可能性がある。

 ならば、どうすればいいのか。やはりそういった膠着状態に陥った国家同士をもう一度、修復させる方法・手段を考えなければならない。歴史的な教訓を考えれば、これは当事者同士の関係だけでは解決するのは難しいが、その場合は、当事者とは無関係な第三国や第三者が仲介に入り、 その調停によって、道を開くことができる。

 そのための本来の機関が、国際連合といってもいいのだが、この国際機関も改革が進まず、国家のエゴや国益の角逐の場になってしまい、なかなかその機能を発揮できないことは、現在の世界情勢をみればわかる。国連のさらなる改変・改革が求められるのである。

 であれば、どうしたらいいのか。誰を仲介に求めたらいいのか。ここで結論を言えば、日韓・韓日関係で、そのキーワードを握るのが、いわば在日コリアンであるといっていいだろう。マイノリティーである在日コリアンは、両国の狭間で生きた悲劇を体験してきたがゆえに、そのまま日本と韓国を結ぶ架け橋になることができる存在であることは言うまでもない。この当たり前の事実を、もう一度直視して日韓・韓日関係を再構築すべきだろう。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 国際連合 (Wikipedia)

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