26.麗水世界博覧会に寄せて

2012年5月1日

麗水世界博覧会 韓国・麗水で麗水世界博覧会が5月12日から8月12日まで長期にわたって開催されている。海洋万博として、今後のアジアと世界情勢との関わりとも深い海洋博覧会として、めざましい躍進を遂げている韓国の勢いと可能性を示す万博ということができるかもしれない。

 また、北朝鮮が新しい後継者体制になったこともあり、今後の南北関係の行く末や周辺国家、韓・日・米・中国・北朝鮮・ロシアなどにも関わることも考えられる。その意味では、麗水世界博覧会は単なる博覧会ではなく、政治的にも余波を及ぼすようなイベントになる可能性もある。  特に、現在の李明博大統領と金正恩第一書記の関係が北朝鮮のミサイル発射から緊張状態を強いられている。両国の関係が不安定な中で行われる麗水世界博覧会が、無事に最後まで終了することを願いたい。

 北朝鮮と対峙する韓国は、今年末には、政治のトップのリーダーを選ぶ大統領選挙が開催される予定だ。時代の転換点を迎えようとしている中にあって、懸念されるのは、まだその政治基盤が確立していない北朝鮮の状況であり、半島情勢の流動性である。しかし、このような状況の中で行われる海洋博覧会には、多くの可能性を秘めたイベントでもある。

 海は今後の世界の動向を左右する海洋資源を豊富にもっている。世界の飢餓問題を解決できる漁業資源もある。改めて、海の重要性を実感させられる万博であり、注目していきたい。陸で育てる牛や豚などの畜産は、人々の食糧を供給するには限界があることは言うまでもない状況である。

 第一に、その牛や豚などの畜産をするための土地も限られているし、エサとなる牧草地もそれほどない。畜産は、それに加えて人間の食糧である穀物を栽培する土地と重なり、今や限界状況である。その意味で、陸地だけでは今後の食糧問題を解決するのは難しい状況だ。

 しかし、それに対して、海に生息する魚ならば、その資源は家畜よりも豊富であり、たとえその魚類の資源が有限だとしても養殖をしていけば可能性は無限大 に広がる。家畜が子を産む数は少ないが、魚の卵は無数であり、それらを養殖によって保護して育てれば、世界70億の人口を養うだけの食糧を供給できるのである。その意味で、海は未来の希望を担うシンボルとも言えるだろう。

 漁業について考えるとき、思い出すのは、民俗学者の谷川健一の著『古代海人の世界』である。冒頭で、谷川氏は、南の海の島で魚が豊富にもかかわらず、魚をほかの島から買っていたという例を挙げている。その著書によると、次のように島や海辺に住む人々を分類している。

 1)海辺に生活していても海に背を向けて土地を耕す農民がいる

 2)また、一口に海の民といっても、航海に従事するものがいる
   (これは魚を獲らない)

 3)漁をするにしても、地先(じさき)の海で漁業をいとなむものと

 4)家船のように海上で生活する漂海民とは別系統である。

 海の近くに住んでいても、魚を獲る技術を知らなければ豊富な食糧を目の前にして餓死しまうこともあるということである。資源を生かしていくためには、ただそれを示すだけではなく、それを獲る方法を手取り足取り教えなければならないのである。

 アフリカの飢餓問題も、海の資源を養殖・開発することだけではなく、アフリカの人々に漁業の方法を教え、そして、それを獲るノウハウを教えることを通じて世界共有の財産にしなければならない。その意味で、食糧問題のカギを握る海の資源だが、それを効率的に供給できるように、地球規模の国家を超えたプロジェクト、麗水世界博覧会の成功を望む。

 そうなれば、人類共通の願い、世界平和の時代、すなわち共生共栄の時代が海洋博から始まるのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 2012麗水世界博覧会公式サイト(Wikipediaより)
  麗水国際博覧会(Expo2012)(Wikipedia より)

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