30.人類一家族を目指して

2012年9月6日

 グローバルになった世界を「宇宙船地球号」と表現するのをテレビやマスコミで時々見かける。最初、この言葉に接したときは違和感を覚えたものだが、今では当たり前の概念として通用するようになった。

 宇宙船地球号という表現は、そこに乗っている世界人類は運命共同体であり、仲間であり同胞であるという意識を感じさせる言葉である。また、人工衛星やスペースシャトルなどから撮影した地球の映像を見ると、まさに地球は多くの生物が共生している生きた生命の船であるという感がする。それほど宇宙から見える地球は美しい。そして、そこには地上で設定された国境線も見えない。人類は一家族であるということが地球の映像を見ていると、自然に納得される気がしてくる。

 137億年前に宇宙がビッグバンによって誕生した。その後、さまざまな銀河や星雲が登場し、最終的にこの地球が宇宙に太陽系のひとつの星として誕生したのが、約46億年前と言われている。その時点から、人類が生まれ、人類史という歴史を刻むまでには、さまざまな要因が絡み、生物進化のプロセスを経ていることは言うまでもない。

 われわれの生命維持に不可欠な空気にしても水にしても、地球の歴史が生み出した環境であり、人類が人工的に造り出したものではない。地球の環境の進化とともに人類は、地表に生まれ、科学を発達させ、社会生活を営み、共同体を形成することによって、食糧の増産と生活の安定を計ってきた。その意味で、人類歴史は人口を拡大しながら、地球の陸地を開拓し、生活圏を拡大してきた歴史とも言えるだろう。

 そのプロセスの中で生まれたのが、共同体としての家族であり、民族であり、国家であり、国境である。それらの中に人種や宗教や文化の違いが生まれ、互いに物質や人民を奪い合う闘争が戦争となって人類史のもうひとつの歴史をかたちづくってきた。

 人類の歴史は平和な時代よりも、戦争が絶えなかった歴史が人類の歴史ということもできる。とはいえ、その物質や人民を奪う戦争が局地的であったために、地球規模に至るまでには長い歳月を経なければならなかった。そして、その人類の開拓歴史の最後のステージを迎えているのが現在の世界である。人類が拓いてきた土地は地球規模になり、未知の世界がほとんどなくなった。

 かつては戦争といっても、広大な陸地の中の一部の出来事であった。地球環境はその痛みを徐々に回復していくことができたし、他の地域では平和な国や平和な時代を謳歌することができた。それが人口の莫大な増加と科学の発達によって、人類は陸地を席巻し、海の資源を乱獲するようになり、もはや地球資源が無限ではなく、いつか無くなってしまう有限なものであることを知らしめるようになった。

 例を挙げれば一国が経済恐慌になれば、それは世界の他の国にまで影響を及ぼす重大な要因となる時代となったのである。世界は今やそれほど緊密に政治的にも経済的にも結ばれていて、瞬時に世界がその影響によって戦争や経済恐慌を引き起こしてしまう。

 そのような時代を迎えているにもかかわらず、国や地域紛争が絶えない。アフリカも中東も、そして、東アジアも、いつ紛争が戦争となって世界各国を巻き込む発火点になる恐れをもっている。それを調停し平和を維持し実現する地球規模の組織である国連は、有効な機能を発揮できずにいる。

 2012年における世界、特に中国・北朝鮮・韓国・日本をめぐる領土問題などを軸として東アジア情勢は紛糾している。それぞれの国家の主張と国益の問題は、長年の歴史が背景にあり、すぐに解決することは難しいことを思えば、われわれはこの宇宙船地球号の同乗者として、未来に眼を向けてもう一度、平和の舵取りをしなければならない。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 世界の人口

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