54.許せ、愛せ、一つになろう!

2014年9月1日

 フランシスコ・ローマ法王がアジアで初めて韓国を訪問したことは、最近の出来事の中では注目されるべきことの一つである。

 アジアで第一に韓国を訪問したのは、キリスト教人口がフィリピンを除いて多数を占めていること、先進諸国として経済的にも国力においても、日本、中国と並ぶ存在となっているからだろう。そして、この法王の平和外交は、イスラム教やユダヤ教の対立の坩堝(るつぼ)にある中東や貧困と麻薬、暴力で混乱しているアフリカ・南米大陸などよりは、効果的なものになる可能性があった。

 本来なら、宗教指導者の訪問の注目すべき点は、政治的な効果や意味ではなく、宗教的な意味合いのはずだが、その点に関しては、あまりふれられていないのが残念である。もちろん、世界中で12億人を超えるカトリック信徒の数を考えれば、その影響力を無視できないことは言うまでもない。

 ローマ法王側・バチカンは、政治的に利用されることを注意深く避けたという印象がある。その意味で、あくまでも世界の多数を占める信徒を有する宗教指導者として終始ふるまったことは、日韓関係がギクシャクした微妙な東アジア情勢にとってはプラスであったと言えるだろう。

 今回、ローマ法王が訴えたかったメッセージは、北朝鮮と韓国が対峙している韓半島における和解と平和への願いであり、そして、世界における貧困問題の解決を目指した、法王就任以来の「貧者の教会」の姿勢を示したものと受け止めることができる。

 平和の使者として、神の愛とイエスの愛による和解、そして、同じ人類同胞として助け合うこと、南北統一を平和な話し合いによる解決を願ったものとみていいだろう。法王がキリスト教人口の多い韓国に、平和と愛を旨とした指導的な役割と責任を期待したというのは十分あり得ることである。

 法王の平和のメッセージの根底にあるのは、要約すれば、「許しなさい、互いに愛し合いなさい」というイエスの博愛精神であることは間違いない。38度線で対峙した北朝鮮と韓国、この同胞同士による骨肉の争いを解決するのは、こうした相手を思いやる精神、互いに助け合い、共に愛し合う精神である。

 ただ、これまでの歴史でこの「許しなさい、互いに愛し合いなさい」という精神だけでは、平和が実現できなかったことも、戦争が絶えなかった歴史が伝える事実である。その意味で、この精神を発展させ、人類の平和への指針を示したのが、韓国で生まれた世界的な宗教指導者の文鮮明総裁であることを改めて思い起こす必要がある。

 怨讐(おんしゅう)である北朝鮮に赴き、金日成主席と会見した文総裁の精神は、イエスのこの「許しなさい、互いに愛し合いなさい」の実践であることは言うまでもない。その文総裁は、この怨讐を愛する精神にもうひとつ「真の愛で一つになりなさい」という言葉を付け加えている。

 文鮮明総裁が、二年前に逝去(聖和)されてからも、その精神はその令夫人である韓鶴子総裁に受け継がれ、新しい平和運動として世界的に展開されている。その意味で、われわれはローマ法王や文鮮明総裁が示した敵をも愛し、許し、一つになる精神に立ち返らなければならない。

 アジアにおける平和、自由、共生共栄の構築、すなわちEUのようなアジア共同体の構築を目指し、互いに過去にこだわることを超えて、「許し、愛し、一つになりなさい」という旗を掲げて前進しなければならない。それこそが、詩聖タゴールが予言した「東方の光」、未来のアジアの平和や世界平和への希望のともしびとなるだろう。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 フランシスコ (ローマ教皇) (Wikipedia)

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