27.ロンドン五輪に思う
今年は五輪イヤーであり、7月27日から8月12日まで、イギリスのロン ドンで第30回目の夏季オリンピックが開催される。特に、今年はイギリスにおいては、エリザベス女王在位60周年という節目を迎え、内外共にめでたい行事が重なることになった。
現在のエリザベス女王は、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国 (イギリス)女王であると同時に、同国を含むイギリス連邦王国16ヵ国の女王でもある。世界の国家元首を見ても、このエリザベス女王のように、世界に多くの連邦国家を有している国家はイギリスにおいてほかにはない。これは、イギリスがかつて大航海時代に世界の海の大半を制した海洋国家として台頭したことから来ている。
元々イギリスは島国であり、他の大陸国家のような広い領土を持っていなかったので、本来は「七つの海を制する」世界的な国家に成長することができなかっただろう。だが、イギリスは海に乗り出し、島国のハンディをかえってプラスにし、世界の海を駆けめぐって、時には海賊行為によって他の大国・スペインなどを圧倒していった。
やがて、イギリスは西欧列強のひとつとして植民地を拡大し、大英帝国と呼ばれるほどの超大国になった。かつてのローマ帝国が道路を整備して地中海世界を制覇し、パックスローマーナの平和を築いたように、イギリスは海を通してイギリスによる平和「パックスブリタニカ」を謳歌(おうか)する。
そのイギリスも第二次世界大戦後、植民地国家が独立することによって衰退の道を歩み、アメリカやソ連のような大国時代を迎え、その後、空を制したアメリカの「パックスアメリカーナ」、続いて技術立国として立った日本の「パックスジャポニカ」の時代が到来し、それが現在、中国が台頭する新たな世界秩序が築かれるようになったのである。
しかし、そのイギリスが海洋国家として世界に残した遺産は数多い。産業革命、そして、民主主義の基本になったマグナカルタなどの憲法思想である。また、近代国家では王制が倒されてきた面があるが、イギリスのみは立憲君主制の政治制度を取り、「国王は君臨すれども統治せず」の精神でまれにみる平和な統治を続けてきた。そのような時代をリードしてきたイギリスで、今年ロンドンオリンピックが開催されるということは実に意義深いことである。
その上、海洋国家イギリスのオリンピックと関連するかのように、海の世界博覧会「麗水世界博覧会」が、韓国の麗水で開催されていることが挙げられる。大航海時代とは違って、現在は資源が有限であり、その資源をまだ無限に近いほど有しているのが海だからである。第一に海底には鉱物資源や希少金属、石油、天然ガスなども多数眠っていることがある。日本と中国が衝突している尖閣諸島の領有権問題も、そこが資源の宝庫だからでもある。その上、世界の人口70億人時代を迎え、食糧危機が叫ばれている現在、養殖などを含む漁業による食糧確保は陸上だけの作物の育成よりも多大な成果を上げられることが期待できる。
また、2020年夏季オリンピック開催の第一次選考に、名乗りを上げた日本の東京が通過したことにも注目したい。今後は韓国の麗水万博、イギリスのロンドン五輪、日本の東京夏季五輪と、これらのイベントを通して、「海」をキーワードとした未来の新しい平和な海洋時代が切り開かれていくことが予想されるのである。そうなれば、近未来、南北の平和統一という理想を実現した韓半島は、イギリスの「パックスブリタニカ」、アメリカの「パックスアメリカーナ」、そして日本の「パックスジャポニカ」に続く「パックスコリアーナ」と呼ばれる新しい共生共栄の世界平和時代を築くようになるかもしれない。
平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)
【参考リンク】 | 夏季オリンピック(Wikipediaより) |
ロンドンオリンピック2012(Wikipediaより) | |
イギリス王室(Wikipedia より) |