62.今こそ東洋精神の時代

2015年5月1日

 平和を生み出す精神文明はアジアから始まり、やがて故郷であるアジアに帰る。

 ノーベル文学賞をアジアで初めて受賞したインドのベンガル州に生まれた詩聖タゴールは、西洋文明の物質主義の時代を超えて、東洋の精神文明が訪れることを予言的な詩に記している。

 「かつてアジアの黄金時代に/ともしびの一つであったKorea/そのともしびが再び明かりを照らす日には/あなたは東方の明るい光になるであろう/心には恐れがなく/頭は空高くあげられるところ/知識は自由で/狭い塀で世界がわけられないところ/真理の深いところから/み言葉が湧いてくるところ/絶え間のない努力が/人間の完成に向かって腕を開くところ/知性の清い流れは/固まった習慣の砂原に道を失っていないところ/無限に拡がりゆく考えと行動で /われわれの心を導くところ/そのような自由の天国に/我々の心の祖国Koreaよ/目覚めなさい!」(「東方の光」。1929年4月2日付「東亜日報」に掲載)

 平和思想、世界の紛争や戦争を解決できる東洋の英知、家族愛を柱として、親子関係を重視し、絆を大切にした東洋精神、それこそが病んだ近代文明を癒やし解決する道があるとタゴールは見通していた。

 それは哲学者も変わらない。

 シュペングラーは、「西洋の没落」を予言し、歴史学者のトインビーは東洋文明の到来を予見した。長期的な視野で地球文明史を見ると、そう考えざるを得ないのである。西洋の物質的な科学文明の時代から精神文明の時代へと転回していくことは、現在の世界情勢を見てもうなずける。もはや科学的な物質だけを中心とした文明が限界が来ていることが、明らかになっているからである。

 世界史的な文明の流れをみても、精神文明、すなわち宗教的な精神は、東洋と西洋を比較すれば、東洋が生誕地であることは間違いない。なぜなら、四大宗教と言われる仏教、キリスト教、儒教、イスラム教も、東洋から生まれているからである。

 そして、その宗教運動の創始者たちが、そのほとんどが弱者として、社会的にいえば、マイノリティーとしてその生涯を送り、そして、志半ばに倒れている。それを後継者が世に広め、マイノリティーがマジョリティーに影響を与え、共生共栄の精神で世界を変えていった。それは、マイノリティーの精神の中には、共に助け合っている生きるという多くのものを包括しえる弱者の精神を支える真の愛があるからである。

 虐げられてきた人々の根底を流れている同胞愛、助け合い精神、それは西洋の植民地支配されてきた東洋の底流となっている。だからこそ、イギリスに植民地化されたインドから詩聖タゴールが生まれ、非暴力主義のガンジーが生まれた。

 また、チベットを侵略した中国を憎むことなく、平和的に解決しようとした世界的な宗教指導者であるダライラマや世界平和や韓半島の平和的な統一を願って活動した文鮮明総裁が生まれたのである。

 マイノリティーは、自分の置かれた立場をマイナスとせず、プラスとして、それを社会の改革や平和の道を架け橋とした人々が少なくない。その意味では、マジョリティーとマイノリティーは、互いに足りない部分を補い合って助け合うことで互いに発展繁栄するのである。

 日本においては、マイノリティーは在日外国人や在日同胞であり、それは歴史的にも古代から日本の文化に貢献してきた歴史を思い起こす必要があるだろう。マジョリティーとマイノリティーの共生共栄は日本でこそ実現されなければならない。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 オスヴァルト・シュペングラー (Wikipedia)
  アーノルド・J・トインビー (Wikipedia)

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