79.地球時代と環境問題

2016年10月1日

 人間は、地球の生前環境の中で育ち、文明を形成し、いまや73億人時代を迎えた。人類の生誕から生息領域を広めながら、地球の各地を放浪し、定住し、家族を作り、村を形成し、氏族、民族、国家を創設しながら陸地を覆いつくす時代となっている。もちろん、荒野や砂漠、そして、地球の環境の多くを占める海など、一部は生息可能ではないが、かつてのような未知の領域は地球の中ではほとんどなくなったというべきだろう。

 人間は食べるために、山で狩猟し、平地に穀物などを植え、海で魚や貝を取り、家族の中でそれを分け合い、余ったものを交換した。生きることとは、食べることだった。労働とは食べるものを確保するための神聖な仕事であり、奉仕であった。一日の大部分を食糧確保のために働き、自然の中で、自分たちの居場所を開拓し、そして、人口が増えれば、村を形成した。一人では生きられないこともあったが、多くの人々と暮らすことで、食料の確保は以前よりも楽になり、また村が増えることで、国家というものが形成されてきた。

 そのようなプロセスをたどりながら、自然とともに生き、その自然が生み出す糧を収穫しながら生きて来たのがわれわれ人類であった。人類がそれほど多くない時代には、自然が無限の糧を生む宝庫であった。川にいけば魚が泳ぎ、山に入れば、山菜や食料となる動物たちを狩ることができ、海に行けば、海藻や貝、魚を取ることができた。人が取っても、取っても、尽きることのない自然は豊かな母親のようであった。

 しかし、今や人類は70億人時代を迎え、自然は無限の宝庫でもなく、限りあるものとなり、やがて枯渇する恐れのある資源であることがわかってきた。穀物を植えることのできる土地、そこで放牧によって育てることができる牛やブタも限られている。この土地をめぐっての紛争や戦争は、歴史上、数限りなくあり、それが国の興亡盛衰を繰り返してきた。究極のところ、世界各地で起こっている戦争や紛争の原因の一つは、この食料問題があることは間違いない。

 現在、73億人を超え、ますます拡大しつつある人口、それを食べさせるだけの資源がこの地球環境の中で得ることが難しい時代となった。このままでは、まもなく食料をめぐって激しい生存競争が起こってもおかしくはないだろう。要するに、限られた資源を保護し、人工的に養殖などで育てていかなければ、第一次や第二次大戦に匹敵する世界大戦が勃発する恐れがあるのだ。特に、食料問題を考える上で、重要なものは、まだ資源の可能性がある海であるといっていい。

 海の魚の人工的な養殖や海底に眠っているエネルギー資源など、今後、人類を養っていくための可能性が開かれている。しかし、その海も、これまでのような自国中心主義の開発や独占、争いなどをしていれば陸地と同じような状況を生むことになるのは火を見るよりも明らか。その意味で、われわれは国という国境や人種や宗教の違いを超えて、人類一家族のために生きる精神で、共存共生共栄のために、自然保護や環境問題を考えていかなければならないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 世界の人口

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