39.国際家族から平和が始まる

2013年6月1日

 現代社会は、特に西洋的な近代個人主義が浸透した社会は、社会を成り立たせている家族の関係や絆が希薄化し、地域ともかけ離れた「無縁社会」となっている。日本でも、隣人との関係が希薄なために、独居老人の孤独死や核家族化した家族の飢餓による死、誰にも知られることなく病気で衰弱死するなどの事件が多発している。

 福祉社会と叫ばれながら、貧富の差が拡大し、益々年金問題や若年層のニート化によって国家の基盤が揺り動かされ、脆弱(ぜいじゃく) 化していることは間違いない。物資的に豊かな文明社会がかえって、個々人の幸福度が低下するという状況が出現しているのである。

 物だけでは満たされない人間の本質が問われる時代となったといってもいいかもしれない。しかし、精神的な豊かさを追求するためには、現在の個人主義的な幸福観の追求からは生まれない。そこには、互いに助け合う、為に生きるという豊かな精神文化が背景になければならないのである。

 高齢化社会も加速化し、このままでは人口も激減し、高齢者の増加と出生率低下による若年層の激減となって逆ピラミッド社会となり、やがて歴史の中に消え去っていく運命を免れない。

 内閣府発行の『平成24年版 高齢社会白書(全体版)』によれば、「将来推計人口でみる50年後の日本」は、「総人口が減少するなかで高齢者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、平成25(2013)年には高齢化率が25.1%で4人に1人となり、47(2035)年に33.4%で3人に1人となる。

 平成54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、平成72(2060)年には39.9%に達して、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されている」と述べている。

 高齢化社会は、高度な医療環境などから長寿の傾向が生まれることから当然なこととしても、結婚しない男女の比率が高まりや出生率の低下などは、未来の社会を危うくする要素であることは間違いない。国家としても、福祉環境などの整備などを行っているが、到底追いつけない。それほど高齢化社会と少子化は加速度化している。

 この状況が続けば産業社会、社会を支えている労働人口の激減による国力の活力の衰退は免れず、少なくとも現在のような先進国家として 各国との同等の地位を保つことができず、早晩、高齢者国家として、かつての「英国病」のように転落の道をたどるかもしれない。日本のように、資源が乏しいために技術開発と高品質物産の輸出産業が支えている貿易立国という性格上、人口の激減、高齢化と少子化は そのまま国家の打撃となっていかざるをえないのである。

 そのためにはどうしたらいいのか。この解決策のひとつは、日本が海外労働者を受け入れるグローバル社会への転換と国際結婚による少子 化からの脱却という面を強化していかなければならないだろう。年間、日本人の約70万カップルの内、十分の一の約7万カップルが国際結婚である。その受け入れ体勢の問題はまだまだ万全とは言えな い。

 まず、日本社会を構成しているマイノリティーである在日外国人の地位向上などを整備しなければならない。特に、長年、戦争の混乱の中で日本に定着し日本社会に貢献してきた在日同胞の問題など、さまざまな問題を抱えているが、これを早急に解決する必要があるだろう。

 近年の在日同胞の70%以上の配偶者が日本人である。また、国際結婚というのは、たんに国が違う同士の個人的な事情による結婚ではなく、背景にある異文化が融合し、互いに交流し、相互理 解を生み出し、平和を生み出す基になるのである。

 「血は水より濃い」、真の愛は血よりも濃いという事がある。そのことを改めて考える時代をわれわれは、今、迎えているのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 国際家族デー事務総長メッセージ(国連広報センター公式サイト)
  国際結婚(Wikipedia)

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