13.国家千年の計を立てよ

2011年4月2日

 謹んでこの度の東日本大震災の犠牲者の皆様に深く哀悼の意を捧げます。

 3月11日に起こった東日本大震災は、これまでの災害をはるかに上回る巨大な破壊力を見せつけた。記録的には千年前の大地震と同じかそれ以上の大惨事と言われている。津波による死者数や行方不明者数万を数える被害、将来まで尾を引く福島原発の事故などの爪痕を残している。いまだその被害の全貌が明らかでなく、原発の放射能漏れ事故も現在進行形となっている。(4月1日現在)

 マグニチュード9.0の大地震、十数メートルを超える大津波による岩手・宮城・福島の海岸部分の壊滅的な打撃(南三陸町は町ごと壊滅)、それに原発の事故など三重・四重苦の悲劇に日本は見舞われている。この後の被災に遭った日本人が暴動を起こさず秩序ある行動と譲り合って再建に向かう姿は全世界の人々に感動を与えた。

 この破壊によって、打撃は東北地方だけではなく、日本の経済に及んでいる。電気の不足によって、鉄道などの交通網や産業への打撃を与え、その回復はしばらくかかるだろうと推計されている。

 今まで人々はいかなる自然の破壊にあっても、そこから復興の足音を響かせ、歳月をかけて立ち直ってきた。日本は過去の例を参考にして防災設備を備えてきたのだが、今回の震災はその過去の例を超えた規模のもので、その防災設備がほとんど役に立たない状態に陥ってしまった。その意味では、防災をその時だけの対処療法的な政策ですませるのではなく、今後、数百年あるいはそれを超えた千年規模の将来を見据えた腰の定まった計画を立てる必要がある。

 では、どのように、千年の国家デザインをするべきだろうか。明治時代は富国強兵の国家デザインをし強国を目指し、第二次世界大戦後は経済大国への道を歩んだ。短期的な国家百年の大計だったが、その両者とも破綻を来したことは歴史の証明するところである。

 しかし、今後はそのような短期的ものではなく、日本は国家千年の計を立て、どんな災害にも対応ができる防災設備を建設するとともに、国家という枠組みを超えて世界平和に貢献する精神大国を目指すべきだろう。

 また、今回の震災では世界各国から義援金や災害救助のボランティアが送られてきた。日本がこれまで世界のために供出してきたODAや多大な国連分担金などの援助に対するお返しという。が、それはそれとして、その感謝の気持ちを忘れることなく、恩返しを世界のためにしなければならない。
 

フーバーダム

 世界平和へ日本がどのように貢献できるかを改めて考える必要がある。それには未来のために巨大なダムを建設したアメリカの精神が参考になるかもしれない。このダムはフーバーダムであり、アリゾナ州とネバダ州の州境に位置するコロラド川のブラック峡谷にあるアメリカ合衆国の多目的ダムである。1931年に着工し、1936年に竣工したフーバーダムは技術的にも政治的にも歴史的にもアメリカにとって大変重要な意味を持つ建造物である。

 それはこのダムの建設よって、その後のアメリカの発展と繁栄への道が切り開かれたからである。電気の供給量の大きさももちろんだが、そのダムの建設によって地元ラスベガスの歴史も大きく変えた。砂漠のオアシス都市に過ぎなかったラスベガスが、今日のような繁栄を迎えたのは、このフーバーダムの存在抜きには考えられない。

 また、その灌漑によって多くの土地が農作可能地を拡大した。フーバーダムのような巨大なプロジェクトは、その建設費に巨額な費用がかかるために、その時代の人々だけの効用を考えていてはできない。その時代だけではなく、国家百年・千年の大計をもって着手し、その後の子孫のための便益を考えて実行されなければ実現できないプロジェクトだ。

 その意味では、完成した直後よりも、今なおその恩恵は続いていると言えるだろう。もし、アメリカ国家がその時代だけを考えていたら、このような巨大なプロジェクトを実行できたかどうかはわからない。

 日本がこのような巨大なダムを建設せよという短絡的な意味ではない。このような長期的展望をもって国家目標・国家デザインを立てなければならないということを言いたいのである。 その意味でいえば、経済効果だけを考えるだけではなく、将来の世界平和や繁栄に繋がるような日韓トンネルのようなプロジェクトを視野にいれて日本国再建を願いたい。

 日本頑張れ!という世界各国の声援を無駄にしてはならないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 フーバーダム(Wikipediaより)
【参考リンク】 首相官邸災害対策ページ(東日本大震災の状況 他)

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