23.新世界の建国の時

2012年2月22日

 今年2012年は、主要国家であるアメリカ、ロシア、中国、フランス、インド、韓国などで首脳を選ぶ選挙が行われる予定になっている(台湾の総統選挙は既に一月に行われた)。

 どの国家も、世界における存在感と影響力を持っているので、その結果によっては、世界情勢が大きく変化するかもしれない。まさに、選挙によって現在のパラダイムとは違った新秩序が形成される可能性がある年といっていいだろう。その意味で、今年は時代の転換期とみることができる。その主要国家の選挙動向は、今後の世界秩序を占う試金石である。

 世界秩序は、国連を中心として、政治や経済の大国から発展途上国、島嶼国家など、それぞれの民族・文化・宗教などを中心に築かれている。そこには先進諸国から開発途上国までさまざまな国家が集合し、同じ土台の上で、世界平和や人権、自由などの問題について論議されている。もし、国連という調整機関がなければ、大国のエゴによって小国が犠牲になるケースが絶えなかったに違いない。

 現に、近代以前の世界秩序は、絶対主義国家による小国の支配、植民地化の歴史であったことは記憶に新しい。それが転換したのは、第一次、第二次の二度の大戦を経て、多大な犠牲を払って学んだ結果である。その意味で、小国であろうと大国であろうと、平等に民族自決の精神、人道主義にのっとった政策がとられるようになったのある。

 国際連盟とその後の国際連合の設立によって、大小にかかわらず、国家としての体裁をもっていれば、大国と同じように一票の権利を持つというのは人類の未来にとって大きな前進であったと言えよう。マジョリティーとマイノリティーの共存と融和がそれによって計られ、世界平和共存という理想に向かって歩み始めた。しかし、その理想は果たして現在も有効だろうか。その理想は現実の壁に相対化し、その高尚な理想は一種の袋小路に入っているのではないだろうか。

 かつて理想的と思われていた古代ギリシアの都市国家アテネの民主主義の直接選挙は、アテネに繁栄をもたらした。が、反面、それが逆の方向へ走ったとき、秩序の混乱をもたらし、政敵を葬るために利用され、かえって有能な政治家の追放を図る道具となってしまったことを思い起こさなければならない。アテネはその長所によって繁栄し、そして、その同じ長所によって没落したのである。民主主義の選挙はベターであってベストでは無いのである。この教訓は、現在の国連の機能不全状態を思い起こさせる。

 国連は自由・平等・平和・共存共栄・人権などを掲げて活動して、さまざまな分野で多くの成果を上げていることは認められる。とはいえ、世界の紛争を解決する特効薬とまでは至っていないのが現状であり、紛争停止状態で平和維持活動はできても、そこに恒久平和を打ち立てるまではいかないのである。あくまでも、対処療法的な措置で終わっている場合が多い。そこに各国の思惑やエゴ、イデオロギーや宗教、人種の対立などによって、一致した行動を取ることが出来ない矛盾を抱えている。

 それを今後、どのように解決していくのか。その方法と施策は何か。国連はどうあるべきか。そのような難問を解決するためには、現在の世界が抱えている根底の病理を解決しなければない。すなわち、政治や経済などの形而上的な問題を解決するとともに、それ以上に紛争や戦争の根底にある人間存在に関する思想や宗教の問題を解決しなければならないのである。

 その意味で、今年は平和な世界を建設する新世界秩序の建国の為の出発の年としなければ ならない。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)


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