72.平和な未来に向けて

2016年3月1日

 最近の世界情勢は、状況が混沌として予測しづらいものがある。イスラム国(IS)など過激派による世界各地のテロが頻発するのもそうだが、これまで世界秩序をリードしてきた大国アメリカのプレゼンスの低下の傾向、そして、中国やロシアが再びその力を誇示しようとしている状況、また、緊迫の度を深めている北朝鮮の核問題である。

 先行きの見えない状況は、世界各国の政治にも影響を与え、現在はどことどこの国が提携し、あるいは対立しているかが見えにくいことも確かである。第二次大戦終了以後の米ソ二大大国の対立を軸として世界の国々が動いていた時代のようなわかりやすさはまったくない。

 ロシアとアメリカは、冷戦時代のような軍事・思想的な厳しい対立はないが、かといって、ペレストロイカ時代の協調性まではない。中東問題でシリアを支援するロシアと反体制派を支援するアメリカ、なおかつISテロには共同歩調を取るというように、複雑な国際政治がまかり 通っている。

 世界平和への対話を主導すべき国際連合の影響力の低下もあり、どちらかといえば、世界各国を動かしているのは、思想やイデオロギーという観念的なものではない。それよりも、国益を中心とした角逐が世界を舞台にして行われているのが、リアルな国際政治であるといっていい。

 また、今後の趨勢として重要な要素である食料や資源エネルギー問題などでは、経済的・政治的対峙をしている状況で、ロシアのプーチン大統領の強健主義、アメリカの大統領選挙にみる混乱の中、中国を交えて三つどもえのような様相を呈している。そのような複雑な情勢の中で、東アジア情勢、日本・韓国・中国・北朝鮮・ロシアなどが置かれているのである。

 まさに、どのような舵取りをしていくべきか、経済関係や軍事関係、思想や政治イデオロギーの問題も含めて考えていかなければならない。そういう時は、情報に振り回されるのではなく、基本的な原点に立ち戻り、そこから世界情勢を考えていく必要がある。

 第一は、日本から見た場合は、どうしても一衣帯水の国である韓国や台湾とは協調と提携を深く結びつつ、東アジアにおける危機に対処しなければならない。もう一方、中国との経済交流や友好を進めていき、ロシアとも領土問題、資源エネルギー問題等で友好関係を保つ必要があることは言うまでもない。

 それに対して、韓国は核開発を強硬に進めている軍事国家北朝鮮と対峙しなければならず、そのリスクのもとに、近づいている南北平和統一の機運を高め、ソフトランディングを進めなければならない。その上、近年、緊密になってきた中国との貿易、経済交流を軸にして、中国とアメリカとの関係の難しい舵取りを続けなければならない。

 これは、日本とは違う地政学上の問題もある。歴史上、中国とは、関係が深くならざるを得ない地勢学的な条件を元々環境的にもっている。さらに、日韓・韓日関係には、過去の歴史における様々なあつれきがあり、最近、ようやく両国の間で、一定の政治上の妥協が成立したが、これもまた、何かあれば再び問題が噴出する可能性も否定できない。

 この問題に関しては、外交的解決もそうだが、歴史的な問題である在日同胞や外国人の選挙問題や地位などの国内問題の解決こそ、今しなければならない課題である。こうした難しい状況の中、2018年の韓国で行われる平昌冬季五輪、そして、2020年の東京オリンピックが行われる。まさに、平和な祭典にふさわしい平和な世界で、それを迎えたいと思う。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 平昌オリンピック (Wikipedia)
2020年夏季オリンピック (Wikipedia)

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