77.女性政治家の時代と平和

2016年8月1日

 アメリカの大統領選挙は、11月8日に予定されているが、その当選結果によっては、アメリカのみならず、全世界の政治状況に大きな影響を与える ことは間違いない。共和党は、かつての自国中心主義を謳ったモンロー主義の再来とも言うべき民族主義的な主張をするトランプ氏、それに対して、民主党は、オバマ大 統領の路線を継承するクリントン女史である。

 そのどちらが、大統領となっても、アメリカが世界の警察官としてリードしていたようなプレゼンスを発揮できないことは明らかだが、この両者の闘いは、もう一方でみれば、男性のトランプと女性のクリントンという男女の闘いでもある。そのどちらが大統領になるかは予断を許さないが、全世界の政治リーダーを見渡してみると、現在、先進諸国のうちで有力な国家では、かなり女性リーダーが占めていることが理解できる。

 イギリスの新首相となったメイ首相、ドイツのメルケル首相、韓国の朴槿恵大統領、台湾の蔡英文総統、リオデジャネイロ夏季五輪開催のブラジルのルセフ大統領など、数多くの女性リーダーが立っている。このような流れは、かつてなかった状況だが、女性リーダーが活躍する素地は、以前からその兆しがあったというべきだろう。

 というのも、これまでの人類の歴史は、平和な時代よりも、むしろ戦争が時代を支配してきた傾向があり、それはおおむね男性の政治リーダーによって引き起こされてきた面があったからである。その背景には、現在のような男女平等の考え方が主流になっている時代には考えられないことだが、政治を行うのは男性であり、家を守るのは女性の役割というふうに思われていたことがある。

 もちろん、例外もあったが、おおよその流れはそのような方向にあり、そのため女性のもつ家族愛や母性などの平和を生み出す能力と可能性が閉ざされていたのである。

 しかし、時代は科学が発達した民主主義的な時代となり、女性の能力が発揮される時代が到来した。これは、男女に能力差があり、どちらが上か下ということではない。家族の平和を守る女性の能力、子供たちを真の愛で包み、和解させ、成長させていく女性の母性が平和な思想が自然に政治の世界にも有効であり、国家間の対立よりも友好・和解には大きな力になるということが分かってきたからである。

 その意味では、今後も女性リーダーたちが世界政治の舞台に登場し、活躍していくことは予想できることである。

 かつて、古代ギリシアの喜劇作家・アリストパネスは『女の平和』という喜劇で、戦争ばかりをしている男性に愛想をつかし、女性たちが砦にこもってストライキをして、男性たちをあわてさせ、最後には、平和を生み出す姿を描いている。まさに、現代の女性リーダー時代が生まれる潮流を予見したかのような喜劇だが、日本でも女性リーダーが立つことによって平和を生み出した例がある。

 それは邪馬台国の卑弥呼とその後継者の女性リーダーが立つことによって、平和になったという魏志倭人伝の記録にある。その意味で、女性リーダーが登場し、その母性愛によって、今後の世界平和に大きな働きをすることは間違いない。その上、人種差別問題やマジョリティーとマイノリティーの対立問題も、こうした母性愛によって解決できる道が開かれることを期待したいのである。

 与える側のマジョリティーが喜んで与え、受ける側も感謝して受ける社会の到来を望みたい。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

【参考リンク】 女性政治家の一覧

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