86.東アジア情勢が平和のカギ

2017年5月1日

 韓国の新大統領が誕生した。文在寅氏は、左派系の思想をもった大統領として、今後の動向が気になるところだが、いまのところ、手堅い印象を与えるほかは未知数といっていいだろう。政治家としての手腕は、その主義思想も大きいが、それよりも全体的な視野を持ちうるかどうか、ということが重要である。

 たとえば、マスコミなどの前評判と実際の政治行動で大きくイメージが違っていた例として、アメリカの歴代大統領の中でも評価の高いレーガン大統領がいる。レーガン大統領は、もともとは政治家出身ではなく、その職業は映画俳優というものだった。それで、俳優に政治がわかるのか、という批判やその政治信条が当時のアメリカの主流だったリベラルではなく、強硬なタカ派的発言で、頑固な融通のきかない保守主義的者として懸念された。

 おおむね、当時のリベラルなマスコミからは、激しい非難を浴びせられていたといっていいだろう。アメリカとソ連という二大大国による冷戦時代だったために、レーガンが戦争の引き金を引くのではないか、というほど戦争勃発の危機的な状況にもあった。しかし、実際には、レーガン大統領は大政治家として冷戦時代を終結させる歴史的な幕引きを果たした。

 その意味では、その政治家としての資質は、前評判やその発言や周囲の雑音、マスコミなどの批評などで決められるのではなく、まさしくその政治的行動、実際の政策や外交、国内政治などの実績から、その真実を判断しなければならないのである。その点では、親北朝鮮系といわれる文在寅大統領が、今後、対北朝鮮、中国、アメリカ、ロシア、日本に対して、どのような手を打ってくるのか、その実際の政策によって、平和な時代を切り開くのか、戦争の火蓋を切ってしまうのか、考えていかなければならない。

 特に、今後の韓半島情勢は、東アジアのみならず、世界平和の危機をもたらす不安定な要因として世界の注目を浴びている。その意味では、韓半島の平和な統一、トランプ流の自国ファーストではなく、両国の平和的な交渉によってソフトランディングさせるためにも、韓国 の新大統領の手腕に注目せざるを得ないのである。

 もちろん、世界各地には韓半島と同じような戦争に発展しかねない紛争地域があることは言うまでもない。中東では、イスラム過激派によるテロ、イスラエルのパレスチナ問題などの紛争の種が横たわっている。そのほかにも、アフリカの部族抗争やテロ、アジアのアフガニスタンなど、地域紛争からいつ本格的な戦争に発展するかどうかわからない状況だ。

 しかし、そうした危機的状況の中にあっても、核開発を行い、実際にミサイルを次々に打ち上げ実験をしている北朝鮮の脅威は格段のものがある。だからといって、その脅威に対して武器で対抗したり、戦争を仕掛けることは、これまでの二度の世界大戦の悲劇を繰り返すばかりである。われわれは、そうした危機に対して、対話と外交交渉によって、平和締結へ努力し続け、そして、新たなパラダイムの時代を共生共栄共義の精神で構築していかなければならないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)


このページの先頭へ