85.世界平和は身近な問題

2017年4月1日

 世界各地で戦争や紛争が局地的に行われ、その他にも一触即発の危機的な状況を迎えている地域は、かなりある。そこには、大きな規模では、世界的な対立、思想的にいえば、民主主義と共産主義・社会主義などの対立、キリスト教・イスラム教・仏教・ヒンズー教・民族宗教などの宗教対立、人種や部族などの違いによる対立、そして、経済格差・文化や民度の差による対立などが絡んでいる。

 その大きな対立の中にも、たとえば、同じ共産主義でも民族や国益の違いによる温度差(中国・ロシア・北朝鮮など)、イスラム教の中のスンニ派とシーア派の対立、そして過激派によるテロに対する姿勢への対立、また、イスラエルと中東をめぐる対立でも、サウジアラビアやイランやイラクなどの姿勢はやや若干違っている。そのほか、多くの複雑な対立の様相が世界政治には絡まっていて、単純に善悪などのような二元対立のように分離することはできないのである。それほど今の政治情勢は混沌とし、そして、一寸先は闇である。

 特に、日本であれば身近な隣国、北東アジアの情勢、北朝鮮の核実験やミサイル発射、それを食い止めようとするトランプ大統領のアメリカ、シリア情勢でアメリカと対立するロシア、煮え切らない中国、そして、朴前大統領の逮捕による大統領選挙など様々な問題を抱えている韓国など、まさに世界大戦前夜のような危機的な局面にわれわれは立たされている。

 そして、その火蓋(ひぶた)は、どのほころびからでも、発火してもおかしくないほど過熱している。思い起こせば、第一次世界大戦も、サラエボで起こった暗殺事件が発火し一瞬に戦争の火花が世界に波及した。最初の一打が小さくても、その周辺環境には、既に世界へ波及する政治や経済、宗教、民族、領土問題が存在していたのである。それと同じように、現在の世界は、まさに第一次世界大戦前夜を思わせるものがある。特に、アメリカは、北朝鮮の金正恩委員長の暗殺を示唆したり、それに応じて、北朝鮮も盛んに暗殺部隊や核ミサイル発射を示唆し、対立を煽っている。

 もちろん、これらは政治的なヘゲモニー(支配権)を握るためのデモンストレーション的な意味合いもあるが、それが実際の行動へいつ転化するかわからないほど、今のやりとりは緊迫感に満ちている。では、これらの世界的な危機的状況の中で生きているわれわれ、一般的な民衆はどうすればいいのか。ただ座して死を待つことができなように、われわれとしての平和への働きかけをしなければならないことは確かである。

 まず、最初に、このような危機的な状況に在ることを認識し、そして、ただ平和を唱えることだけではそれを実現できないことを覚る必要がある。そして、われわれができること、すなわち小さな火花が大きな戦争に発展するには、国民感情が大きな要素を占めていることを認識し、身近な環境に平和を実現していくこと。すなわち、ヘイトスピーチのような対立を煽る社会環境を是正し、マジョリティとマイノリティが共に手を携えていく国家を 作り上げることである。

 平和は、そうした個人、家族、氏族、民族、国家の共生・共栄・共義の精神文化から生まれていくからである。自国中心主義からでは、平和は生まれないのである。

平和大使在日同胞フォーラム代表 鄭時東(チョンシドン)

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